なぜ完全クラウド移行できないのか?現場目線で見る5つの制約とハイブリッド構成の現実

クラウドセキュリティ

完全クラウド一本化はしている組織は、体感としてかなり少数派です。
この記事では、なぜ「完全移行」が難しいのか、5つの制約に整理して考えます。

完全移行できない、は本当か

まず実態を確認します。総務省「令和7年通信利用動向調査」によると、クラウドサービスを利用している企業は8割を超えています。産業別では情報通信業96.0%、金融・保険業93.1%、不動産業92.6%と、9割を超える業種もあります。

一方で、具体的に利用されているサービス内容を見ると、「ファイル保管・データ共有」(70.8%)、「社内情報共有・ポータル」(57.5%)、「電子メール」(56.7%)が上位を占めています。特定の個別サービスへの導入が中心であり、「基幹システムを含めた全システムを完全にクラウド化した」という状態とは異なります。

さらに、同調査ではクラウドサービスへの依存度も見えます。「電子メール」は「そのサービスがないと企業活動の継続が困難」「大きな支障が出る」の合計が68.2%、「ファイル保管・データ共有」も61.2%と、既に業務への組み込みは深いことがわかります。

つまり実態は、「クラウドは広く浸透し、依存度も高い。しかし、それは“部分的な導入の積み重ね”であり、全システムの完全移行とは別の話」というのが正確なところです。

参考:総務省|令和7年版 情報通信白書|データ集

理由①:レガシーアプリケーションの認証依存

古くから使っているオンプレミスのActive Directoryに強く依存したアプリケーションは、クラウド移行の最初の壁になりがちです。Kerberos認証を前提に組まれたシステムや、オンプレADのグループポリシーでしか制御できない業務端末など、「クラウド化したいが、この1本のアプリのために完全移行できない」というケースは珍しくありません。

理由②:ネットワーク・レイテンシの制約

工場の製造ラインの制御システムや、店舗のPOSシステムなど、ミリ秒単位の応答速度が求められる用途では、クラウド経由の通信では遅延が許容できない場合があります。物理的にオンプレミスに置かざるを得ない領域は、業種によっては今も一定数存在します。

理由③:ライセンス・コストの壁

長期間使ってきたオンプレミス向けのライセンス(パーペチュアルライセンス等)が残っている場合、クラウド移行によって追加コストが発生することがあります。既存投資を無駄にしたくないという判断が、移行を止める理由になることもあります。

理由④:コンプライアンス・データ所在地の制約

業種によっては、データの保管場所や管理責任の所在について、規制・監督官庁のガイドラインで制約を受けることがあります。特定のデータだけはオンプレミスに残さざるを得ない、というケースです。

理由⑤:組織・運用体制の壁

技術的には移行可能でも、運用チームがクラウド運用のスキルセットを十分に持っていない、または既存のオンプレミス運用体制を前提とした組織構造になっている、という組織側の制約もあります。技術の話だけでなく、人と体制の話でもあります。

それでも移行を進めるには

5つの制約すべてを一度に解消しようとすると、動けなくなります。現実的なのは、制約の種類ごとに優先順位をつけて段階的に進めることです。例えば、レイテンシの制約があるシステムは残しつつ、ファイル共有やメールのような依存度は高いが制約の少ない領域から先に完全移行する、といった進め方です。「オンプレミスとクラウドの併用」自体をゴールではなく、移行の途中経過として捉える視点が現実的だと思います。

現場で確認しておくべきこと

自分の組織で、なぜ完全移行できていないのか、その理由が上記5つのうちどれに当てはまるか整理してみてください。

「なんとなく移行が進んでいない」状態のままだと、次のアクションが見えません。理由を言語化できれば、「この制約は技術的に解消できる」「この制約は組織の判断待ちだ」という切り分けができ、次に何をすべきかが明確になります。

あわせてご覧ください

コメント

タイトルとURLをコピーしました